2013 UCI MTBマラソン世界選手権レースレポート ~世界の壁との葛藤

レース: 2013 UCI MTBマラソン世界選手権
結果: 87位(140人エントリー、115人完走)
タイム: 5時間33分41秒
場所: オーストリア、チロル
開催日時: 2013年6月29日
コースコンディション: 曇り
レース距離: 94km
獲得標高: 4400メートル

大会ウェブサイト:http://www.kitzalpbike.at/en/mountain-bike-marathon-world-chmpionship-2013.html

マラソン世界選手権は各国の代表選手が一同に集まり、MTB長距離世界一を決める場だ。

日本代表は今年で3年目。毎年世界の壁の厚さに打ちのめされるような結果だが、その中で課題を持ち、努力と準備を積み重ねてきた。

今年の代表選手は山本幸平選手(Specialized)、門田基志選手(GIANT)と私の3人。名実共に申し分ない頼もしい日本代表選手団だ。

マラソン日本代表とはいえ、基本チームサポートはなく、自分たちで動かなければレース出場すら成り立たないのが現実だ。今回行動を共にしている門田選手の知人の方がレースサポートおよび現地でのアテンドをしてくれることとなり、レースへ集中できる環境が整い、非常に助けられた。心から感謝。

昨年、全コース試走をできなかった反省を生かし、今年は1週間前に現地入りをして数日に分けて余裕を持った試走を入念に行った。この選択は時差の調整にも役立った。

試走を終えての感想として、まずコースとオーストリア・キッツアルプのスケールの大きさに驚愕した。壮大に広がる険しくも美しいアルプスの山中に設定された94キロのワンループ。1回の獲得標高約1000メートルの登りが4回繰り返されるモンスターコース。テクニカルなシングルトラックも下りセクションでミックスしてあり、非常に変化に富んでいる世界選手権に相応しいコース設定だ。

大会ウェブの高低差で見る以上に急勾配な登りが続き、完走するだけでも相当な体力と精神力が必要とされる。そして、山岳地帯ということで寒暖の差が激しく、レース期間中の気温は基本一桁でとても寒く、2日前には雪が降るほどだった。当日は超過酷なレースが予想された。

レース前日はサポート班と入念なレース中のサポート計画を行った。2班に分かれ、車とゴンドラを駆使して8か所あるサポートゾーンの内6か所で補給とテックサポートに回ってくれることになり、さらには写真・ビデオ撮影までの体制が整った。

当日朝の気温は8℃と寒いものの、予報が変動してなんとか雨や雪は免れた。

©YujiJoko

私の番号は124。ポイントが無いのでほぼ最後尾からのスタート。非常に不利な状況だがやることがはっきりしていたので不思議とワクワクしていた。ここからは上へ這い上がるしか道はない。

©YujiJoko

©http://bikeboard.at/Board/MTB-Marathon-WM-Kirchberg-th183658

6月29日午前8時、私にとって特別なこの日。今年もまたこの場に立てていることに感謝しつつ、世界への挑戦が始まった。

Kirchbergの街中をMTBで40km以上の超高速でレースは進む。後方は障害物も見えず、トップ集団の小さいスピードの緩急の影響を受けてムダに足を使ってしまう厳しい状況。しかし、頑張ってでも着いて行かないと一瞬で置いていかれてしまう。

©YujiJoko

超高速巡航から休む間もなく、そのまま全力ペースで1時間はかかる一つ目の登りに突入。

このシビアな世界の舞台では長丁場だからと言って体力を温存するという考えはない。基本は体力が続く限り常に全力を出し、目の前の選手と競い合い、少しでも順位を上げる。それができるトレーニングを積んだ者しかこの世界選手権という舞台に立てないことも事実だ。

登りではテクニカルな箇所はなく、急斜度の林道メインが続き、純粋な地足の強さ、そして長い登板での高出力維持能力が明暗を分ける。長い登りは得意な方だがヨーロッパ勢の地足の強さには驚かされた。テクニカルなセクションがないだけに誤魔化しが全く効かない。

©YujiJoko

調子は悪くなく、足もフィーリング的には良く回っている。例えば、体調を崩した春の「SDA in王滝」100kmと比べると、コンディションは遥かに良い感じに仕上がっている。

©http://bikeboard.at/Board/MTB-Marathon-WM-Kirchberg-th183658

しかし、前を見ると数えきれないほどのライダー達が九十九折の上に見える。このショッキングともいえる光景はまず日本国内では経験できない。

これを絶望的と受け取るのか、それとも先を目指す火付けになるのかは精神力次第。

這い上がるために必死に積み上げた努力の先に待ち受けていたこの光景の精神的ショックは正直大きかったが、日本代表として背負っているものと目指していることは心の中で振れずにはっきりしていた。今の自己ベストの力をペダルへ注ぎ続けた。

すると前のライダー達に近づき始め、少しずつだが順位が上がり始めた。少なくとも自分のスタート位置からはだいぶアップしたはずだ。

©http://bikeboard.at/Board/MTB-Marathon-WM-Kirchberg-th183658

一つ目の登りの頂上付近は約30%の超急勾配。すごい数の観客の声に救われてなんとか登り切り、第一フィードを通過。

超高速のジープロード下りからテクニカルなシングルトラックへ入り、ここでもう一つ前のグループへドッキング。

2つ目の登りもほぼイーブンペースでレースを進め、順位をキープ。下りのテクニカルなシングルトラックで再び前へ詰めることに成功。テクニカルなセクションでは周りに負けていないことを実感。これが自信にもつながり、更に前を追う後押しとなった。

©YujiJoko

3つ目の登りの後半にはスキーの有名なアルペンコースを逆走するというとんでもない急斜面の登板セクションが待ち構えている。気持ち的に準備ができていたので、試走をしていて本当に良かったと思った。

フィードではボトルだけでなく、元気ももらえる。マラソン選手にとって、長く孤独な戦いの中にあるサポーターとの接触は非常に嬉しい瞬間でもある。ほんの一瞬だがフレッシュなボトルと共に気持ちまでリフレッシュさせてくれる。

©YujiJoko

3つ目の下りは緩く長いジープロードを超高速で駆け抜ける。私のギヤ比は登板用に軽く合わせていたため(スラムXX1:フロント32T)、ギヤを回し切ってしまうことを恐れていたが、前のライダーの流れに入ることにより、問題なくこなすことができた。経験とスキルがあればSRAM XX1(1X11システム)でも変化に富んだマラソンコースにも対応できるということが証明できた。

4つ目の最終登板が始まった瞬間から足が鉛のように重く感じ、内腿も攣りはじめた。この最終の登りは約10キロ、獲得標高約1000メートル。登り切れるか不安になる数値だ。シッティングとダンシングを交互に繰り返し、使う筋肉をできる限り分散させて誤魔化しながらも登り続けた。

©YujiJoko

集中力は保っていたが、身体が付いてこない。明らかにペースダウンし、3つ目の登りと下りで稼いだ順位もどんどん落ちていく。ここまでの約80キロ、獲得標高3400メートルが自分の限界だったのだろうか。一番軽いギヤでもビッグギヤのように重く、「頂上まであと5キロ」のサインから頂上までは永遠に感じたほど体力が消耗していた。

頂上からは100%シングルトラックの急勾配のテクニカルな下りがフィニッシュまで続く。

©YujiJoko

足だけでなく、腕や手も疲弊しきっていてバイクをコントロールする力が残っていない状態となっていた。試走ではあんなに楽しかったシングルトラックも今は拷問にすら感じる。ブレーキやグリップを握っているのかも分からないほど感覚が麻痺していた。一つ一つの細かい振動すら苦痛だった。それは周りの選手も同じようで、こんな状態の私でも登りで抜かれた何人かを抜き返すことができた。しかし、辛いことには変わりない。

©YujiJoko

落車ギリギリのラインで最後のスラロームセクションに辿り着き、ゴールまで1秒も無駄にしないようにスカスカの足ながらもペダルを踏み直してフィニッシュラインをくぐった。

©HiroshiKiyama

結果87位。

フィニッシュした瞬間は完走できたことに喜びを感じたが、決して楽観視できる結果ではない。すごく落ち込む気持ちもあるが、この事実をしっかりと心に刻み、しっかりと消化して心を上へ向けなければ次のステップはない。

©HiroshiKiyama

昨年との結果比較。昨年は88位でトップから1時間33分遅れ、今年は87位でトップから1時間3分遅れ。順位は1つしか上がっていないが、トップとの差を30分詰めた。情けないレベルではあるが小さな一歩を踏むことができた。

最後のペースダウンを考えると競う以前にコースにすら対応できていなかったことがわかる。

苦い経験ながらも世界のトップスタンダードと現段階の自分の限界レベルを例年以上に身体に刻むことができた。そして、こんなに悔しい思いは二度と繰り返したくない。

ここにいた全員が各国を代表している強豪選手。さらに誰もが向上しようとしているその中で上に行くことは生半可なことではない。

トップとの差を埋めるには何をすればいいか。必死に考えて自分の為、これからの日本の為にもやるべきことのリストを書き出している。次回までにその一つ一つを確実にこなしていくつもりだ。

どんなに厚い壁であろうと、挑戦してぶつかり続ければ必ず突破口は見つかる。

やると決めたらこの瞬間から行動するのみ。

絶対にあきらめない。

今回のマラソン世界選手権参戦を実現させてくれたスポンサー、サポーターの皆様に心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。

初マラソン世界選手権で日本人史上最高位25位フィニッシュを果たした山本幸平選手、病み上がりにも拘わらず健闘した門田基志選手、本当にお疲れ様でした。そして、現地で献身的なサポートをしてくれた木山さん、上甲さん本当にありがとうございました。

たくさんのサポート、応援本当にありがとうございました!

レース機材

バイク: CANYON GRANDCANYON CF SLX 29
ドライブトレイン:SRAM XX1 (フロント30t)
フォーク: MAGURA TS8 SL 29
ブレーキ: MAGURA MT8
ステム/シートポスト/ハンドルバー: RITCHEYSuperlogic/TRAIL/WCSCarbon
ホイール: DT Swiss with Stan’s tubelesskit
タイヤ: Continental Race King 2.2(F)Race king 2.2(R) Protection
グリップ: Ergon GS2
グローブ: Ergon HA2
サイクルコンピューター:CycleOpsジュールGPS(サイクルコンピューター)
シューズ: North Wave Extreme
ペダル: Crank Brothers Eggbeater 11
サングラス: adidas Eyewear Evil Eye Half Rim Pro L
ヘルメット: Limar
ボトルケージ: Topeak ShuttleCage CB
チェーンオイル:Finishline Ceramic Wet Lube

補給食:パワーバージェル&VESPAプロ
リカバリー:C3fit コンプレッションソックス
テーピング:ニューハレ

パーソナルスポンサー:

チムチムレーシング
スポーツクラブ ルネサンス
パワーバー
CycleOps:パワータップ、ジュールGPS(サイクルコンピューター)
C3フィット:コンプレッション
VESPA
NEW HALE:テーピング
HALO HEADBAND:ヘッドバンド

チームスポンサー:
Ergon
Topeak
Canyon
SRAM XX1
Magura
RitcheyBicycleComponents
ContinentalTires
DT Swiss
Primal Wear
Finish Line
Northwave Shoes 
Adidas Eyewear
Jagwire
FRS
Crank Brothers
Chamois Butt’r
Stan’s No Tubes
EPIC Action Cam 
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