ザ・ノースフェイス・ヤックアタックレースレポート ステージ7

ヤックアタックステージ7
結果:9位
GC:2位
時間:4時間33分15秒
距離:25キロ
獲得標高:1036メートル

ステージ6のレポートはここから

3時起床。頭痛もあり、体調は優れない。朝食は、食欲もなく、詰め込んだ感じで無理やりエネルギーを充電。外は暗闇の極寒の世界だ。

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今日のステージは登山という慣れない動きで負担がかかることを予想し、ニューハレテーピングで膝と足首を補強。

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一歩も外に出たくないほどの環境と体調だったが、覚悟を決めてバイクを括り付けたバックパックを背負い、スタートラインへと向かった。

今日のステージはほぼ乗車は不可能で冬山登山が大半を占めるクレイジーなレースだ。

午前4時。スタートの合図と共に一斉に「登山競争」が始まった。

辺りは真っ暗、ヘッドライトの光だけが頼りだ。4番手を行くラジュクマ選手の背中にべったりついていった。

思考回路もまともに働かないので置いて行かれないように、「ただ付いて行くだけ」。これしかこの時の自分にはできなかった。ヘッドライトで照らされるラジュクマ選手の後姿を追い続けた。

歩き始めて血行がよくなったからなのか、幸い頭痛は引いてくれた。しかしながら酸素の薄さはひどかった。常に呼吸がギリギリの状態。ペースが少しでも速くなって呼吸がわずかでも乱れると非常にきつく、落ち着くということが一切なかった。

しかし、朝の体調を考えると悪くないペースだ。4人いる4位集団の中で2番手をキープしている。

後ろに背負うバイクの重さが徐々に辛くなってくる。若干の右への重心のズレが時間が経つにつれて何倍にもなって身体のストレスになってくる。

そして、末端の冷え。肩を回したり、腕を振ったりしないと指先の感覚がどんどん無くなっていくほど。

次第に周りが明るくなり始め、景色がぼんやりと見え始める。

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©GauravMan Sherchan

そこには今までに見たことがないほどの美しい山の世界が広がっていた。落ち着いて眺めている余裕などないが、感動の気持ちで心はいっぱいだった。

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©GauravMan Sherchan

そして、ついにソロング・ラ峠を登頂!レーサーの中では5番手で到達。

頂上ではこんな素晴らしい冒険体験をできていることにひたすら感動し、涙すら浮かべるほどだった。MTBをやっていて、そして体力を養っていて本当に良かった!

凍らないように胸ポケットに入れていた小ボトルのスポーツドリンクを一気に飲み干す。水分補給のチャンスはほぼないので今しかないと判断した。身体に近い胸ポケットに入れていたにもかかわらず半分シャーベット状になっていたことには驚いた。

下りの準備をすぐにし、登頂の感傷にゆっくり浸っている間もなく山の反対側へと下山を開始した。

路面状況は例年よりも積雪と残雪が多く、乗車が困難な状態。加えてまさかの乗車不可能な機材トラブルが発生し、ライド不可能になってしまった。暴れるバイクを横に抱えながら自らの足で走りおりていった。激しすぎるルートでオリンピック級のモーグルコースのようなところをバイクを持ちながら下り降りると言ったイメージだ。

横に滑り落ちれば二度と戻ってこられないような危険な場所でもあった。

何度も転がったり、尻もちをついたり、普通のバイクレースでは想像もつかないようなダウンヒルを体験した。途中の超急斜度のアイスバーンの下りでは登山靴もグリップしないのでバイクを胸に抱え、叫びながら滑り台のようにソリの姿勢で滑り下ったりもした。まさにアドベンチャーだった!

そんなダウンヒルの状況が10キロ以上続いた。機材トラブルを抱えた私は乗車ができなかったので先頭集団からかなり遅れを取ってしまった。

ようやくスノーフィールドを抜けると町が見え、コースも道幅の広いジープロードへと変わっていった。機材トラブルを修正してなんとか乗車はできるようにフィックスし、なんとかフィニッシュへの下りをこなすことができた。

高山病を患い、ステージ完走も厳しいかもしれないと不安もあったが、なんとか五体満足にあの超山岳コースをフィニッシュすることができてとても嬉しかった。

今日のソロング・ラ峠越えの体験は一生忘れられないものとなるだろう。それほどに過酷で素晴らしい経験だった。

しかしながら峠でのネパール人のタフネスには恐れ入った。このステージをぶっちぎりで優勝したナラヤン選手(去年のヤックアタック優勝者)はこの極寒の冬山にも拘らず極限の軽装で臨んだ。その姿にはネパール人のこのステージに賭ける覚悟とプライドすら感じた。結果、右小指が治療にかなり時間がかかるほどの凍傷になってしまったが、彼は満面の笑みで優勝を喜んでいた。その姿勢は心の底からリスペクトだ!

いよいよ明日は最終ステージ。

まだ高山病は抜けていないが、ここまできたら最後まで今できることを全て出し尽くす!

ステージ8へ続く。