中田コーチによる王滝データ解析まとめ

Facebookでは公開済みですが、自分のデータながら興味深い解析・分析だったので改めてブログでも掲載します。

以下、Peak Coaching Group Japanの中田尚志コーチがSDA in王滝100キロのレースデータを解析してくれた内容です。コーチありがとうございます!

[レース] SDA王滝ウイニングデータ解析! その1

池田選手のレースデータを見て行きましょう。
王滝は日本最大規模のMTBマラソンです。一番の特徴は100㎞におよぶ距離です。
4時間37分というレースの中で、走る条件は刻々と変化して行きます。
その変化に耐えることがレースに勝つ条件になって行きます。

レースをパックで走った前半と、独走に持ち込んだ後半に分けて見てみましょう。

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・峠のパワー
最初の峠での攻防は激しく32分でNP288Wを記録しています。
IF(FTPに対しての強度)を見ると0.931ですから、かなり高い強度です。体内のグリコーゲンの約半分を消費する強度と時間とも言えます。

また王滝は標高が高い分、酸素が薄く数値以上のダメージがあります。
WKO4の新機能ECP(もし標高0mで走ったとしたら何ワットになるかの推定値)で見るとECP292W。体は低地で292Wで走ったのと同じダメージを受けている事になります。


・NP
レース前半のNPは245W, 後半のNPは218W。
最初の峠でグリコーゲンを半分使ってから、まだレースは4時間あるわけですから後半はグリコーゲンが枯渇した状態で走らざるを得ません。その為後半のNPは218Wにまで落ちています。

これは単に疲労状態からくるものだけでなく、後半の峠の標高が全体的に高い(スタート地点902mに対し、後半の山頂は1587,1558,1533m)ことも影響していると考えられます。

これはECPにも表れており、レース全体を通して低地と比べて+10W余分に負荷がかかっています。

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・峠のペダリング
最初の峠では、QAⅠ(FTPを超えかつ90rpmを超える領域)が7.7%、QAⅡ(FTP以下かつ90rpm以下の領域)が47.6%。
最後の峠では、QAⅠが0.6%、QAⅡが39.1%となっています。

ここから最初のバトルでは、ハイケイデンス(90rpm以上)でFTPを超える能力が、後半はペースが落ちてきても踏み負けない持久力(90rpm以下でトルクフルな出力)が必要な事が分かります。

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・気象条件
気温
最低4℃
最高23℃

スタート時の気温は4℃、レース中の最高気温は23℃。4時間半のレースの中で19℃の気温差があります。

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・標高
最低 902m
最高 1612m
平均 1386m

1,000mを超える高地では、空気は乾燥します。また酸素が薄い分、エネルギー消費が大きく体は脱水状態になりやすくなります。

これら気温差・標高は、筋肉がつりやすくなります。
実際、池田選手も前半のハイペース+気温差+標高により、レース後半は、筋肉の攣りに苦しめられました。

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データを次回のレースに活かす。
池田選手のデータを見て行く中で、下記の王滝対策が見えてきます。

キー・ラーニングポイント
・標高により実際のパワー値以上に体は消耗している。(海抜0mに比べて+10W消耗している)前半飛ばし過ぎると、いつも以上に後半踏めなくなるので注意。

・後半は標高の高さからパワーが出なくなる。「終わってしまう」ようなペースアップは避け、いつも以上に注意深くペーシングする必要がある。低地に比べて+10W負荷がかかっていると認識しておくこと。

・前半の峠バトルに備えて速いケイデンスで高いパワーを出すトレーニング、後半の為に低いケイデンスでトルクの高いパワーが出るトレーニングを行う必要がある。

・気温の差、標高から筋肉が攣りやすい。レース前の食事で電解質(マグネシウム・カリウム・カルシウム)は、通常より意識して摂る必要がある。

・カフェインは水分を逃がす為、レース週のコーヒーは控えめに。

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[レース] 加齢を味方につける方法 解析その2

SDA王滝のウィニングデータ解析

昨日に続いて池田選手の走りを更に見て行きましょう!今日は36歳にして自己ベストを5分縮めた理由です。

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池田選手にとって、春の王滝は「鬼門」で、優勝できそうで出来ない年が続きました。
写真の表は2011年から2016年までの池田選手の王滝の順位とタイムです。

昨年秋の王滝は優勝しているものの、春の王滝に関しては2012年を最後に優勝がありませんでした。(王滝は年に2回あります。)

そこで今回は優勝した昨秋の王滝をベースにトレーニングを組み、なおかつ昨秋以上の調子に持って行くを目標にしました。

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(1)過去のデータをベースにトレーニングを組み立てる。

我々にとって都合が良かったのは、昨年と今年のレーススケジュールが非常によく似ていた事です。
昨秋の王滝、今回の王滝ともに海外のステージレース参戦が終了した22日後にレースがありました。

その為、ステージレース終了後の疲労回復と、残り22日間のトレーニングスケジュールを昨年をベースに増減する事が容易に出来ました。

2015 秋の王滝
モンゴリア・バイク・チャレンジから22日後にレース
モンゴリア終了後 CTL116, ATL182, TSB-94

2016 春の王滝
ジョバーグトゥーシーから22日後にレース
ジョバーグ終了後 CTL120, ATL147, TSB-48

2015 / 2016年 比較
CTL116 / 120 =フィットネスは、ほぼ同じ。
ATL182 / 147 =疲労は若干軽め。
TSB=-94 / -48 調子(疲労状態)も軽めということが分かります。

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(2)トレーニング計画

2015年のモンゴリアは極度の疲労の上に、参加者から風邪をもらい体調を崩しました。
その為、調整程度のトレーニングで王滝に出場せざるをえませんでした。
データを見るとTSBが-94に達していることが大きく免疫システムに影響している事は明白です。

その為、今回はTSB-48と軽いものの、帰国後1週間はFTPを超えない有酸素ベースのトレーニングで様子を見ました。
レースは1週間に25時間走るハードなものでしたから、帰国後1週間のトレーニングは4時間/週に抑えて回復に努めています。

回復がすすみ体感的にハッキリと体調が良いと感じれるようになってから、昨年出来なかったFTP以上のトレーニングを入れて調子を上げます。MTBマラソンと言うと距離が強調されがちですが、実際は激しいアップダウン、ライバルとの攻防がありFTP以上の強度も出現します。

ライバルとの攻防を越え(FTP)、独走に持ち込むことを前提(VO2Max / Tempo)としたトレーニングをレース週の水曜日に行いました。
これは体力の強化になるだけにでなく、良いイメージトレーニングになります。

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(3)レース当日
迎えたレース当日のPMCは下記のとおりです。昨年の秋を超えるフィットネス(CTL)、調子(TSB)を実現してレースに臨んでいる事が分かります。これは体調を把握するだけでなく自信を持ってレース当日を迎える精神的なバックアップにもなります。

レース当日
2015 秋の王滝
CTL93, ATL80, TSB+26

2016 春の王滝
CTL106, ATL110, TSB+21

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結果
Stravaデータで2012年優勝時と2016年優勝時を比べてみましょう。

2012
最初の登り 4941climb: 29:45, 13kph, 262W, 908VAM(VAM=1hに何m登れるか)
最後の登り SDA王滝 春 激坂入口~最後のピーク: 22:16, 15kph, 221W, 571VAM

2016
最初の登り 4941climb: 28:53, 13kph, 283W, 935VAM
最後の登り SDA王滝 春 激坂入口~最後のピーク: 22:24, 15kph, 219W, 567VAM

結果的に全体では4年前のタイムを5分短縮して優勝。MTBは路面状況が大きくタイムに影響する為、一概に言えませんが、タイムを短縮して優勝しているのですから強くなっていると言い切って良いと思います。

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データと経験を活用しレースへの戦略を立てて行けば、加齢はスローダウンの要因ではなく、速くなれることを示しています。

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キー・ラーニングポイント
・過去のCTL、ATL、TSBをベースに現在の状態を把握する。
・過去のレースをベースにトレーニングを組み立てる。
・過去の実績を元に未来を予想し修正する。
・当日、自信を持って迎えれるようにトレーニング、データの確証をつくっておく。

より多くのデータを蓄積し、活用する事で皆様も年を追うごとにパーフォーマンスを上げて行って頂きたいと思います。

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CTL:過去42日間のTSSの平均=どれだけトレーニング出来ているか=フィットネス
ATL: 過去1週間のTSSの平均=どれだけ疲れているか
TSB: CTL-ATL=調子=どれだけ疲れが抜けているか

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注意点:データはトレーニングの結果です。ですから数字合わせに走るトレーニングではなく、ベストなトレーニングを行った結果、狙った値に収まるのが大切です。

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秋の王滝で皆様の走りにお役立て頂けると嬉しいです。

Peaks Coaching Group – Japan
中田尚志
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