2016モンゴリア・バイク・チャレンジレースレポート

大会名:MBC (モンゴリア・バイク・チャレンジ)
大会ウェブサイト:http://www.mongoliabikechallenge.com/home/
開催地:モンゴル
開催日時:2016年8月21〜25日
結果:4位(6日間総合)/プロ(カーン)カテゴリー
ステージ1:4位
ステージ2:4位
ステージ3:2位(カテゴリー1位)
ステージ4:3位
ステージ5:4位
ステージ6:5位

各ステージの距離と獲得標高
1:105km, 1930m
2:113km, 2750m
3:117km, 2110m
4:130km, 1150m
5:88km, 1481m
6:25km, 489m (タイムトライアル)

今年で2回目のチャレンジとなるMBC。昨年は全く表彰台に絡めず、悔しい思いを残しての4位。今年こそは世界の強豪と勝負をし、結果を残すためにこのモンゴルの地に戻ってきた。

今年は6日間(昨年は7日間)、各ステージの距離も大幅に短縮されているが、決して勝負が楽になるわけではない。その分スピードと強度が上がり、よりシビアな勝負展開が予想された。

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ステージ1

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©www.paolomartelli.com

ウランバートルの市街地からニュートラルスタート。気持ちを高めながらリアルスタート地点へと向かう。いよいよ6日間の激闘の始まりだ。

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今大会3回の優勝経験があるカナダのコーリー・ウォレス選手が序盤からペースアップ。これにより早くも先頭集団が形成される。ウォレス選手、ペイソン・マクエルビーン選手(USA)、昨年の優勝者ニコラス・ペティーナ選手(イタリア)、ハンズ選手(ベルギー)、岡本紘幸選手(日本)、私を含めた6人に絞られた。

登りの度にペースアップ、平地では牽制、の繰り返しで非常に強弱の激しいレース展開。

レースの3分の2が過ぎたあたりでのマクエルビーン選手のアタックをきっかけにレースが本格的に動いた。

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一瞬でも足を緩めたら置いていかれる強烈なハイスピードでマクエルビーン選手を追う。集団がついに崩れ始めた。

気づくとペティーナ選手、ウォレス選手、私の3人でのチェイスグループとなっていた。身体中が悲鳴を上げているがなんとか食らいついている。昨年はこのグループにはついていけなかったので、自分の成長を感じることができる。

しばらくすると長い深い砂地セクションへと突入。ここで地足の差が徐々に露呈。少しずつ二人の背中が離れていく。うまくライン取りでなんとか遅れないようにするがやはり強い。

この砂地獄により完全に集団はバラバラになり、マクエルビーン選手、ペティーナ選手、ウォレス選手、私の順にほぼ等間隔の差が生まれた。

残り約15キロはコースサインが曖昧なところがあり、何度かロストしかけたがなんとか前のウォレス選手の姿を見失わないように必死に追いかけた。

差をキープしたまま最後まで全力を尽くし、初日は4位でフィニッシュ。トップからは約5分差。表彰台には登れなかったが、昨年は数十分離されていたので、確実にトップに近づいていることを実感できた。

マクエルビーン選手が逃げ切りステージ優勝、ペティーナ選手2位、ウォレス選手3位。

ステージ2

大会中最も獲得標高が多い超ハードステージ。最初の登りからウォレス選手の信じられないようなペースアップ。マクエルビーン選手、ペティーナ選手、岡本選手が着いていく中でオーバーペースとなり、息が上がりきってしまい遅れをとってしまった。

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モンゴルの丘は基本スイッチバックが無く、斜度が非常にきつい直登トレイル。20%超えの斜面が次から次へと姿を表す。路面も砂利で滑りやすいので重心バランスコントロールもシビアに要求される。

ここで生まれた僅かな差が命取りとなる。風が吹き荒れるモンゴルの荒野で先頭集団の4人は集団の利をうまく使い、力をセーブしながらレースを進める。一方私は単独で向かい風と戦いながら彼らを追う。

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しかし、足は良く動き、気持ちはポジティブ。一人でも必ず追いつけると信じてペダルに力を込めた。

前で動きがあったようで岡本選手が遅れ始め、中盤を過ぎたあたりで追い抜き、順位を4位にあげる。序盤のあのハイペースに乗った岡本選手の力強さは本物。同じ日本人としてリスペクトだ。

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徐々にだが確実に前の3人の後ろ姿が近づいてきた。ついに残り約20キロ、ワンコーナー差で追いつける位置まできた。

しかし、こちらの追い上げに気づいた3人はそこから更にペースアップ。こちらは単独でほぼ全力ペースで来たのでさすがここから上げることはできなかった。コースも容赦の無い急斜面のテクニカルな激坂が続く。姿は見えるものの再び離れていく。ここからフィニッシュまではとにかく差を最小限に抑えるための忍耐の走りとなった。

二日目もマクエルビーン選手、ペティーナ選手、ウォレス選手に続く4位でフィニッシュ。

もう少し、もう少しで表彰台に手が届く。

ステージ3

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本日も過酷なビッグステージ。表彰台の3人が序盤から激しいふるいをかけてくる。しかし、どう頑張ってもこの波に乗ることができない。悔しすぎる。

岡本選手、ハンズ選手、私の3人で第2集団を形成し、協力し合いながら前を追った。

中盤で岡本選手がパンクで遅れをとり、ハンズ選手と私の二人で前を追った。ハンズ選手は47歳でマスター2カテゴリー。私とは別のクラスだが世界的にも非常に強い選手だ。ハンズ選手のペースには合わせずに私は常に前の3人を追う走りをし、ハンズ選手は私の後ろに着いた。

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今日のコースは幾つもの深い川を越え、荒れた路面を進む。かなりきついが変化に富んだ面白いコースだ。

ラスト15キロを切り、前の3人がコースロストしたとの情報が入り、私たちが一気にトップに躍り出た。

残り10キロはほぼ平地、差を広げるためにも全力でこぎ続けた。ハンズ選手も私を風除けにしつつ必死に後ろに付いてきている。

フィニッシュゲートが近づき、念願のステージ優勝だと思ったその瞬間。2時間近く後ろに付いていたハンズ選手がすっと前に出てきてまさかのスプリントを仕掛けてきた。

私は彼の前を引き続けてスプリントの足も残っていなかったので反応もできず、あっけにとられた。ここまで一度も前に出ることもせずに、終始引っ張ってきた相手にする行為だろうか。これはレース経験がある選手ならば絶対にありえない行動。

結果、ステージ優勝はハンズ選手、数秒遅れで2位私、3位はロスト後に追い上げた総合リーダーのマクエルビーン選手。プロクラスでは優勝だが腑に落ちないステージ結果となった。しかし、モンゴルで初めて表彰台に登れたことは嬉しい。3日終えた時点の総合は4位。

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ステージ4

今大会最長の130キロ。

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霧が濃く視界が悪く、気温は一桁の非常に厳しい環境の中のスタートとなった。いきなりの全力ペースでレースは始まった。

視界が悪い中でのデコボコの道をいかに効率良く、スピードを殺さずにペースアップできるかに全神経を集中した。

一時遅れを取りかけたがなんとか先頭集団に留まることに成功。霧が晴れ、気温は上昇し、レースも徐々にヒートアップし始めた。昨日の手応えと怒りもあり、今日はいつも以上に結果を残したいという強い気持ちがあった。

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集団のペースが一時落ち着いた65キロ地点あたりで、思い切ってアタックをかけた。まだレースは半分以上あるのでここから単独の逃げはかなりリスクがある。しかし、これが逆に意表を付き、総合トップ3人は私のアタックに付いてこなかった。

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©Hyunki Kim

徐々に足と心のエンジンを上げていく。まさかこの距離は逃げ切れないだろうという相手の思いを覆すために。

逃げること約25キロ、約90キロ地点でメディアカーから5分近く差を付けているとの情報が入る。5分は大きい。あと40キロ。死力を尽くして逃げ切ってみせる。

後半は向かい風が強く、ほぼ平坦。単独は部が悪いがエアロポジションを取り、タイムトライアルモードでひたすら踏み続けた。

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3人が高速ローテーションを組み、少しずつ差が詰めてきている情報が入る。世界でもトップクラスの3人が協力して私を追走している。恐ろしいが、3人を本気にさせているこの状況に興奮し、ワクワクすらしていた。

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©Hyunki Kim

110キロ地点を通過。ついに後方彼方に3人の姿が視界に入ってきた。もの凄い勢いだ。

こちらももう一段ギヤを上げるが、どうあがいても彼らの姿はどんどん近づいてくる。

これは逃げ切れない。

約50キロ逃げた時点で捕まり、振り出しに戻ってしまった。

向こうも私を捕まえるために相当のエネルギーを使ったようで追いついてからはペースが落ち着き、ところどころでアタックはあるものの決定打はなく、膠着状態が続いた。おかげでこちらは千切れることなく、最後のスプリントへの準備と回復ができた。

残り200mを切ったあたりのデコボコのセクションからマクエルビーン選手がキレの良いスプリントで一気に飛び出す。それにウォレス選手と私が付いていく。ペティーナ選手は路面の影響で出遅れたようだ。

コンマ何秒の世界での相手への反応と、荒れた路面での一瞬も無駄にできない効率的なスプリント。そして最高のライダーが相手。興奮しないわけがない。

極限まで集中したがやはり前の二人を捉えることはできず、3位でスプリントを終えた。

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マクエルビーン選手1位、ウォレス選手2位、私が3位。総合は変わらず4位。

昨日に続き、トップ3相手に勝負ができている手応えをより実感できた日となった。約50キロの逃げ、スプリント勝負、3位入賞。あと2日、まだまだいけるはずだ。

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ステージ5

 90キロ。この日はスタートからかなりの強風で逃げも作れずにしばらく大きな集団での走行が続いた。

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レースが動いたのは30キロ地点にある補給ポイント。止まる選手と止まらない選手に分かれ、そこでペースアップした選手がいたことによりレースは荒れた。補給ポイントでのアタックは本来ならばマナー的に御法度。しかし、レースは続行されたので対応するしかない。

混乱のセクションを終え、ウォレス選手とドッキングして前を追う。トップはペティーナ選手とマクエルビーン選手、少し置いて岡本選手、そして私とウォレス選手という順。

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ウォレス選手は超強敵だが親友。二人ともモチベーションを高く持ち、お互いに引っ張りあった。後半になるにつれ、グングンスピードが上がっていった。今にも置いていかれそうな限界ギリギリのペースだが彼と高め合える時間はすごく楽しい。

終盤に差し掛かり、フィニッシュゲートも視界に入ってきた。二人で3位まで順位を上げ、トップ二人もちらっと遠くに見えるがゴールまでの距離を考えるとこのままだと追いつけない。

ウォレス選手との3位争いのスプリント勝負がほぼ確実となる。お互いに後ろに付くことを止め、ハイペースで並走し始め、緊張感が次第に高まっていく。

「絶対に勝つ」

ほぼ同時にスプリントを仕掛ける。

ゴール手前がコーナーとなっていて砂も浮いているのでハイレベルなトラクションとバランスコントロールが要求される。一瞬の判断とコントロールミスでクラッシュを引き起こす可能性もある。

ウォレス選手が最初にコーナーに入るが、私はインを突き、フィニッシュ数メートル手前で再び横一線となる。

全力の一漕ぎをして二人でバイクを前に突き出してのフィニッシュ。

結果は、悔しくもウォレス選手の勝利。タイムは同じだがほんの10cmほどの差で負けてしまった。表彰台も逃してしまった。

第5ステージ、総合ともに4位。あと一つで表彰台という4位という結果は非常に悔しい。悔しいけれども、勝負ができていることはすごく嬉しい。昨年の勝負をさせてもらえなかった4位とは天と地の差だ。

ステージ6 最終日

昨日の夕方あたりから予期せぬ事態が発生。胃腸の調子が狂い始め、夜中もトイレを往復し、ろくに眠れぬまま朝を迎えた。

今日のステージは1分ごとに一人ずつスタートする25kmのタイムトライアル。超ハイスピードの短期決戦だ。

お腹が受けつかないが、エネルギーが必要なのでほぼむりやり朝食を詰め込む。

ネガティブになりそうなメンタルを上げるためにウォームアップを入念に行うが、一向に具合が良くならず、スタート前に再びトイレにこもることに。私のスタート時間が1分前に迫るが腹痛が酷くトイレから出られない。

「このままでは間に合わない。」

腹を括り、トイレから飛び出してスタートへ向かうがすでに私のスタート時間は過ぎてしまっていた。

レース審判の人たちが、

「止まらなくていいからそのまま行け〜!45秒ほど遅れただけだ!」と叫んでいる。

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©www.paolomartelli.com

間に合わなかったが、とりあえずレースはスタートできた。あとはこの25キロを耐えて全てを出し尽くすだけ。

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©大平緑

遅れた分、すぐ後ろからウォレス選手がスタート。

追いつかれないように必死にペースを上げる。そして、いち早く前の選手に追いつきたい。

お腹の調子はとりあえず落ち着いているようだ。足の調子は逆に良いくらいだ。今日もウォレス選手と抜きつ抜かれつの高め合いながらのペースアップ。前にスタートしたハンズ選手も追い抜く。

しかし、ウォレス選手の後ろからスタートしたペティーナ選手が信じられない勢いで追いついてきては、私たち二人を置き去りにしていった。W杯でも結果を残している彼の走りはさすがだ。圧倒されそうになるが、負けてはいられない。

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©www.paolomartelli.com

今日でモンゴルの超戦は最終日。このコースに今まで積み上げたもの全てを出し尽くし、置いてくる。足を緩めたいところで鞭を入れるようにダンシングでペースアップ。そのあとのタレそうなところでケイデンスを上げる。

後悔だけはしたくない。

フィニッシュゲートくぐるその瞬間まで前だけを見続けた。

©大平緑

第6ステージ結果は5位。スタートの遅れがなければ一つ順位は上がったかもしれないがそれもレースの運と一部。しっかりと受け止める。

6日間総合結果は4位。

目標としていた総合表彰台は悔しくも今年も届かなかったが、その内容は大きく改善することができた。昨年は一回も登れなかったステージ表彰台に2回登ることができ、さらに優勝をかけた勝負に絡むこともできた。

最高の舞台で最強のライバル達と高めあい、限界まで追い込む。こんなにも刺激ある6日間は今まであっただろうか。超濃密な時間を過ごし、生きていることを実感し、命を賭けるほどのワクワクする経験。これはレーサーにしか味わえない世界。アスリートで本当に良かったと思う。

素晴らしい走りで優勝を手にしたペイソン・マクエルビーン選手(USA)。まだ若く、これからも要注目選手!

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昨年の覇者、今年2位のニコラス・ペティーナ選手(イタリア)。優勝こそ逃したものの彼の走りはやはり世界トップクラス。IMG_9253

3位のコーリー・ウォレス選手(カナダ)。BCバイクレース優勝、2回のマラソンナショナルタイトルなど輝かしい経歴を持つコーリー。親友にして最強のライバル。今回もたくさんの刺激をもらった。ありがとう!IMG_9255

一緒に戦った全てのライバル達には心から感謝とリスペクト。彼らがいなければこの世界は味わえないし、成長することもできなかった。本当にありがとう。

そして、応援・サポートしてくださった全ての方達に感謝。

ありがとうございました!

レース機材

バイク: Canyon LUX CF 29 チームエディション

ドライブトレイン:SRAM XX1, 32T

タイヤ: Continental Race King 2.2Protection: 前後18~20PSI

グリップ: Ergon GS1

グローブ: Ergon HX2

ペダル: Crank Brothers Eggbeater 11

ヘルメット: Limar

ボトルケージ: Topeak ShuttleCage CB

チェーンオイル:Finishline CeramicWet Lube

補給食:GUパワーバージェル&VESPAプロSayako’s Kitchen

リカバリー:C3fit コンプレッションソックス

テーピング:ニューハレ

パーソナルスポンサー:

NEW HALE:テーピング

自転車コーキ屋

Peaks Coaching Group Japan

VESPA

パワーバー

THE NORTH FACE

C3フィット

なでしこ健康生活・生きている玄米

ヒロコンフーズ

VITAMIX

HALO HEADBAND:ヘッドバンド

オルタナティブバイシクルズ

民宿 藤屋(王滝村)

百草丸 日野製薬(株)

スポーツクラブ ルネサンス

チームスポンサー:

Ergon

Topeak

Canyon

SRAM XX1ContinentalTires

Primal Wear

Finish Line

Crank Brothers

Chamois Butt’r

Stan’s No Tubes